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思考が常に子供じみている。
いや、正確には思考の順路に経年的な変化が無い。とでも言うべきか。

自由で良いと思うけど、自由ではいられない。
自分のやり方でやれば良いとは思うけど、そうも言ってられない。

そんなときに、彼に会った。

ボクは彼のことを「あなた」と呼び、彼はボクのことを「キミ」と呼んだ。ここだけを読むと完全に夫婦の二人称だが、まぁ、本当のことだから、ボクにとってこの呼び方に違和感はない。ボクにとって彼はいつも「あなた」と呼ぶべき存在で、彼にとっては幼年的な思考の順路を持つボクは「キミ」の他にありえない。「オマエ」と呼ばれても良いのだろうが、彼はけしてそんな言葉を使ったりはしなかった。

3年ほど前に初めて彼を知ったが、彼と目が合った瞬間、すべての感情が吸い上げられていくような感覚を得た。ボクは昔から、一日の中に存在する節目という節目に瞑目をする癖があるのだけれど、まさにそのときの感覚は瞑目と一緒だった。

目を閉じて頭を空にする。気づけば、聴覚がその他四感に比べて明らかに鋭利になっていく。体の境界線が曖昧になり、自然に溶けていく感覚を得る。こんなときに鬱陶しく感じるものは、大体において周囲の人間の音だ。人の声、街の騒音、すべてに対して苛立ちが湧き上がる。彼と出会った瞬間、いや、正確には彼と目が合った瞬間、ボクが感じたものは、まさに瞑目と同じものだった。

彼が他の人に見えないのは気づいていたけれど、関係ない。ボクらは常に脳内に生きている。自分があると認識するものは確実に存在する。ただ、周囲の人間との感情のすり合わせが成り立たなくなるだけだ。

そんな彼が久しぶりに現れた瞬間、小さな罪悪感とともに、瞑目の感情が湧き上がってきた。
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